村の挑戦
2014年4月14日
村内に7軒あった製材工場が次々と姿を消し、最後に残った唯一の小さな製材所もついに閉鎖することとなった。平成7年のことである。かつて山から多くの恩恵を受けてきた村から製材所がなくなることは、林業立村を目指す上で大きな痛手となってしまう。そんな熱い思いで村がこの製材所を購入したことから、根羽村の新たな林業への再挑戦が始まった。時を同じく、地域材を使おうという動きが全国各地で起きていた。丸太を加工して売れば付加価値が付くだろうとの単純なもくろみは、スタートから頓挫した。一方、消費者側である設計事務所や工務店は、地域材を使おうにもどこにあるのか、品質や価格は保証されているのか、注文にきちんと対応できるのかなど多くの疑問を抱えていた。それじゃあ双方の情報を共有すれば、この問題は解決できる。家を建てようとするお施主さんの情報を、設計事務所や工務店を通して、山元である森林組合と共有することによって、計画的に森林を間伐し、必要な材を製材し、家を建てる現場まで直接お届けする「トータル林業」の仕組みを構築した。消費者には安全で安心な材料が確実に手に入り、山では間伐によって適正に森林が管理でき、加工販売することによって森林組合で雇用が確保される。村の中で林業が再度「業」として復活できる確かな手ごたえを感じた時である。
村の中で「雇用の循環があること」、「経済の循環があること」、「生きるための小さなサービスの循環があること」が、人が住み続けられるためには必要である。自分たちの地域を誇れる大人となって、次世代を担う子供たちに明るい未来をつないで行くことが、私たちの役割と思うのは私だけでしょうか。